ボイストレーニングに熱心な人は、情熱のあまり喉に過剰な負荷をかけてしまう事があります。
声帯は繊細な器官ですので、傷がついたまま酷使を続けていると「声帯ポリープ」「声帯結節」などの腫瘤が喉にできてしまい、声が枯れたりうまく声が出せなくなってしまいます。
歌にとって体は楽器ですので、乱暴に使えばいつか必ず壊れます。
「声帯ポリープ」「声帯結節」はできやすいタイプの人もいるので、症状や対策について知識を持っておきたいですね。
上記のコラムでは、微衷各の手術で私の声が大きく変化した体験を紹介しました。
今回はボーカリストと深いつながりのある『声帯ポリープ』について解説します。
ボーカリスト生命の危機!?声帯ポリープ
声を道具にする仕事の人にとって、喉は命。
声帯ポリープは声のに大きく障害を残す可能性のある病、これにより引退に追い込まれる歌手や声優も少なくありません。
宇多田ヒカルの母『藤圭子』はポリープをきっかけに歌手活動を休止。
『鋼の錬金術師』エドワード・エルリック役などで活躍中の声優・朴ロ美さんが、声帯ポリープのため休業されたのは記憶に新しいかと思います。
アスリートと同じように、声を生業にする人は、ポリープなどのリスクを常に意識しながら活動をする必要性があります。
声帯ポリープとは?
ポリープとは、皮膚や粘膜に生じる突起のこと。
喉にポリープができると、気道がふさがる状態になり声が枯れる、出にくい症状が残ります。
※似た症状として『声帯結節』という喉にできるいぼもあります。
原因、症状はほとんど同じと考えて問題ありません。
- 無理な発声方法が癖になり、喉をさらに傷つけ悪化させる
- 喉の炎症が進行、ポリープが複数に増えてしまう
- 手術などでポリープを除去しても、本来の発声方法が取り戻せなくなる
ポリープを放置して歌を続けていると、段階を経て取り返しのつかない自体を招いてしまいます。
「声帯ポリープ」発症時はどんな症状?
- 息がしにくくなる
- 声の伸びが悪くなる
- 慢性的に声が枯れる、高い声が出なくなる
ポリープや結節ができると呼吸の軌道が狭くなり、上記の症状が発生します。
風邪をひいただけだと思っていたら一緒にポリープができていた、なんてこともあり、比較的簡単に出来てしまうものだといえるでしょう。
※発生率や頻度には個人差があります。
何が原因なの?
ポリープの原因は、喉の粘膜の内出血からくるものがほとんどです。
そのため、歌手や声優をはじめ、職業柄大声を出す人にも多く発生します。
お酒や煙草など、喉に負荷をかける嗜好品を好んで摂取すると、発症率が高まります。
発声の方法に問題がある歌手に多い
ライブを年に何百本とこなす人が全員ポリープの経験があるかといえば、そうではありません。
発声方法が悪い、声帯に負荷がかかる声の出し方をしてると、割と簡単にポリープに侵されます。
プロの歌手は一日2時間のコンサートを何ヶ月も続けなければなりません。
ハードな音楽生活を乗り切るには、正しい発生方法を学び、喉に負担の少ない発生方法をマスターする必要があります。
ロックシンガー、女性歌手に多い
ロックやメタル・パンク音楽のボーカルには、喉を潰して声を出す歌唱法が多く、ポリープの発症が多く見られます。
女性の歌手に多いのも特徴。
原因は、女性のほうが音域が高く、声帯への負荷が男性より多いためです。
X JAPANのToshiさんや、TUBEの前田さんなど、女性と同じくらいハイトーンを多用するシンガーも同様の理由でポリープの経験があります。
こうしたリスクのある歌唱法を主とする歌手は、アスリートと同様に喉のコンディションを管理しながら、ライブやレコーディングのスケジュールを調整する必要があります。
声帯ポリープの治療法と手術について
初期の発見であれば、お薬で炎症を抑えて治療する形をとられます。
ポリープの大きさが一定以上になり、明らかな支障をきたしてる場合は手術での除去。
昔は大掛かりな外科手術でしたが、最近は胃カメラのような機器を使って声帯を取り除くという、比較的簡単な手術になりました。
全身麻酔・2週間程度の入院が必要となる大掛かりな内容であることに変わりはありません。
しかし、成功率はほぼ100%といえる手術なので、そこまで危険視する内容ではありません。
※最近では日帰りの手術を行う病院もあります。
予算は10万円〜が相場のようです。
声帯ポリープ・手術のリスク
ポリープが出来た以上、除去したほうが良いのは確実ですが、リスクももちろんあります。
- ポリープの除去により声帯を傷つけてしまう
- 本来の声帯の形に戻らない可能性もある
安静な生活をしていれば、声帯の傷の完治は確実です。
日常生活にも問題はなくなるとおもいます。
しかし、発症前と状態が変化する可能性は少なくなく、声質の変化のリスクは避けられません。
実際に、手術前後で歌い方や声質が変わってしまったシンガーさんは多く見受けられます。
プロであれば、歌い方を修正して遜色ないほどに回復する人もたくさんいますが、声に大きな変化が生じることは覚悟すべきです。
まとめ
「声帯ポリープ」「声帯結節」について、ご理解頂けましたでしょうか?
まずはこうした事態にならないよう、日常生活から気をつけることが大切です。
声がかれる、違和感がある場合は、まずは耳鼻咽喉科での診察をお勧めいたします。