家で歌の練習をすることが環境的に難しい人は、カラオケでボイトレや歌の練習をする事も珍しくないと思います。
私は以前まで「カラオケで練習するならエコーを切って練習してください」と教えていました。
自分の声を正しく認識するには、エコーが邪魔になってしまうからです。
しかし、最近ふとしたことでカラオケで歌う機会があり、あることに気がついてから「カラオケのマイクを使用して練習しないでください」と教えるようになりました。
今回は、カラオケでのボイストレーニングの盲点についてお話しします。
自分の声が違う!?
「マイクで歌うと自分の声が違う」
私自身も長い間、歌をレコーディングしたりする中で、マイクを通してスピーカーやヘッドホンから出てくる声と直接自分の耳で聴いている声の印象の違いに悩んでいました。
レコーディングボイストレーニングを繰り返す中で、自分の印象とマイクを通した声の誤差はなくなりました。
しかし、カラオケでエコーを切って歌ってみても明らかに自分の声が違う声に聞こえます。
しかも「普段ボイトレを行っている時より若干喉が疲れやすく感じる」のです。
マイクを通さずにアカペラで歌ってみると、自分の理解している通りの声で発声しています。
私は自分のスタジオでもマイクを通したモニタリングで、ほぼ毎日レコーディングやレッスンを行っているので、マイクやヘッドホンで違和感を感じるはずはないのです。
自分のスタジオのボーカル録音でもこんな感覚に鳴った事はありませんでした。
これは明らかにおかしいと感じ、ちょっと調べてみました。
カラオケ部屋と環境の問題点
カラオケの部屋の大きさには差がありますが、かならずBGMを大きな音で流れ、同じスピーカーから歌も出力されます。
エコーを使っているとなおですが「カラオケ部屋は音が回りやすくハウリングをおこしやすい環境」だと考えられます。
私は『音場環境に合うようにマイクの音質が調整されている』という事に気がつきました。
カラオケマイクと通常のボーカルマイクの違い
カラオケマイクは、多少音量や声質のバランスが悪くても歌っている人が心地よく歌えるようにチューニングされています。
- ハウリング防止のため低音〜1khzくらいまでの中音が削られている
- オケとかぶりを回避すべく8khz〜の高音域を持ち上げ声の抜けを良くしている
男性の声の中音部分は1khzあたりに多く、おいしいところがバッサリカットされていたのです。
実際の声より声が細いように聞こえてしまうので「無意識に声が太くなるように発声方法が変化し、喉に過剰な負荷をかけてしまう」という悪循環が生じていたと考えられます。
カラオケでしか歌わないのであればそれでも良いのかもしれませんが、加工された音を聴いて発声方法を調整するのは非常に危険です。
「耳が聞こえない人が歌を歌う」くらいリスキーな練習方法であり、発声フォームが悪い方向へ変化をしてしまう危険性が非常に大きいと考えられます。
聴いている音が実際の音と違うわけですから当たり前ですよね?
まとめ
ボイストレーニングを行う上で「音を正確にモニターする」ことは最も重要であり、基本中の基本。
カラオケマイクで声質や発声方法を調整してしまうと、通常のボーカルマイクを利用した際にそのギャップに対応するのが非常に難しいです。
自分の正しい声を認識できないので、発声フォームにも大きな悪影響が予測できます。
ボイストレーニングは、正しい方法を保ちながら継続する事ではじめて効果があらわれます。
カラオケで歌の練習やボイストレーニングを行う場合は、カラオケマイクは使わずに練習する事をおすすめします。