高い声が出ない事に悩んでいる方は、生徒にも非常に多いです。
ポピュラー音楽では非常に幅広い音域が要求され『高い声ほど目立ちやすい』という理由も含め、高めの音域が歌にはよく使われます。
声帯の構造上、純粋な地声で出せる音域には限度があります。
声帯が短い人は地声が高い反面、低い音域を拡張する事はできません。
『高い声』が出なくて悩んでる人は、あるトレーニングで飛躍的に音域を伸ばす事ができます。
『裏声』を使えば高い声も簡単に!
裏声(ファルセット)を使った事がありますか?
裏声を使うと高い声が簡単に出るかわりに、なんとも頼りなく情けない声になってしまいます。
ほとんどの人はボイトレの際『地声』で練習をします。
そして無理に高い声を出して無駄な力みのあるフォームが定着するという悪循環に陥ります。
高い声を出すにはこの『頼りない裏声』の力を借りる事が必要なのです。
裏声と地声の違い
声帯は左右二枚の薄いひだでできています。
吐き出す空気を声帯に接触させ、その振動数によって声の高さが決まります。
『裏声』では、声門を逆に開いていく事によって、声帯の一部のみを振動させ発声します。
裏声が小さい声になるのは、使っている声帯の部分が小さいためなんですね。
高い声が出ない原因と『裏声』重要性
地声の音域を超える高い声を出すには裏声と地声の発声を混ぜる『ミックスボイス』を使います。
そのためには、裏声と地声の声質的なギャップをなるべく少なくするために、裏声でも音量やメロディーを自由にコントロールする必要があります。
高い声が地声でうまく出せない原因の多くは「高い声=力を入れる」という先入観にあります。
声の高さは声帯の伸縮のコントロールによって決まりますが、余計な力が入りすぎると首の周辺の筋肉を緊張させてしまい、喉が閉まって細い声になったり、呼吸の軌道を狭くして呼吸が不安定になります。
結果、高い声は声質のボロボロな貧弱な声になってしまうのです。
「高い声を力を入れて出す」という先入観を取り除くためにも、裏後(ファルセット)やミックスボイスで声帯や声門を力みなくコントロールする技術を習得する必要があります。
『地声』+『裏声』=『ミックスボイス』
ミックスボイスを習得するためには、まず裏声と地声の境界線をなくす練習が必要になります。
練習方法
音階等の発声練習の際、少しでも高いと感じる声をすべて裏声に変えて練習します。
難しいのが『裏声→地声、地声→裏声』と声質を変化させる際に、最初はかならずつまってしまったり違和感を残してしまいます。
※裏声と地声の切り替えポイントを通称「チェンジ」と呼びます
二つの発声を行き来する練習を繰り返すと、発声方法の切り替えが非常に容易になってきます。
『ミックスボイス』ってどんな声?
日本のポピュラー音楽のなかでは、平井堅さんが『ミックスボイスの天才』と称されています。
それほど彼のミックスボイスは美しく力強いのです。
身長の高いシンガーは声帯が長く、声が低く音域が狭くなりがちです。
彼は、そのデメリットをうまく克服し、声の太さと繊細さを手に入れたと言えるでしょう。
聴いていても地声と裏声の境界線がまったくわからない、見事なコントロールですね!
大橋トリオさんも長身ですが、美しいファルセットやミックスボイスを使いこなしています。
ファルセットを使っていても、声の存在感が変化しないのが素晴らしいですね。
『ミックスボイス』習得の仕上げ
裏声と地声がスムーズに移動でき、変わらない音量やコントロールで使えるようになったら『裏声をミックスボイスに変える』工程に入ります。
- 裏声を出しながら、喉(声門)を狭めていくイメージで、地声のザラッとしたニュアンスを足していきます。
- 少しでもあごや首、肩に力みを感じたら一回中止し、リラックスした裏声の発声からやりなおします。
- 歌の中で、高い部分をミックスボイスで歌ってみる。それを録音して聴いた感じの違和感が無いかを確認。
録音内容を聴いて地声のようにミックスボイスが響いていたら、目標達成です。
ミックスボイスを習得すると、地声で高い声が出るように
高い声が出ない人は、ミックスボイスを使うしか選択肢がないかというと、そんな事ありません。
ミックスボイスに重要なのは「高い声を力まずに出す感覚を学べる事」
高い声が力まなくなると緊張が抜け、リラックスした発声が維持しやすくなります。
徐々に余計な癖が抜けてくるので、どんな声の出し方でも変に体が緊張する事がなくなります。
結果、地声で高い声を出しても首や顎・肩等に余計な力がはいらなくなるため、高い声が柔らかいフォームで発生できるようになるのです。
ミックスボイス自体の活用も効果的ですが、地声でリラックスした発声を作り出すために、ミックスボイスを学ぶ事は非常に重要なのです。
まとめ
プロのシンガーはほぼ全員、ミックスボイスを使っています。
しかし素人の人にはその違いがわからないほど自然に使いこなされています。
この練習方法は「使える声質での高い声」を習得するために、あえて力を抜く方向にアプローチしています。
余計な力みを無くすトレーニングをする事で、地声も楽に高い声が出るようになってきます。
喉をしぼって高い声を出していては、使い物にならない「か細い高い声」が出るばかりで魅力的な声にはなり得ません。
声帯を傷めてボイストレーニングには悪影響しかないんです。
本格的に歌が上手になる事を願うなら、力んだ聞き苦しい高い声を捨て本格的なミックスボイスにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?