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ボイトレのための発声理論

腹式呼吸のやり方・正しいトレーニング方法

腹式呼吸のやり方・正しいトレーニング方法

ボイストレーニングで誰でも最初に指導されるのが「腹式呼吸」
「腹から声だせ!」というやつです。

私も様々なトレーナーから指導を受けてきましたが、理論や手法は様々。
意外とプロの方でもその理屈を正しく理解していない方が多いようです。

  • 「腹式呼吸」が何故、必要なのか?
  • 腹式呼吸の見分け方、やり方とトレーニング方法

今回は上記について説明いたします。

腹式呼吸と胸式呼吸

呼吸には「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の2種類があります。
呼吸は肺に空気を入れ、口や鼻から排出する行為ですので、どちらの呼吸法でもその内容に違いはありません。

発声という観点においては、腹式呼吸のほうがメリットが多いためボイトレでは腹式呼吸を徹底するように指導します。
下記の図を参考に、二つの呼吸法の違いとメリット・デメリットについて解説します。

胸式呼吸

肺の上部に空気を取り入れ、吐き出す呼吸法。
深呼吸をした時に肩が上がったり、胸が開く・胸に圧迫感を感じる場合は胸式呼吸です。

鏡を見ながら大きく空気を吸ってみると、上半身が大きく動くので分かりやすいです。
声が小さい人、内向的な正確の人に多いタイプです。

胸あたりには胸骨や肩甲骨、あばらなど様々な骨がはりめぐらされており、肺をコントロールするのに必要な筋肉が十分に備わっておりません。
そのため、呼吸の量を安定してコントロールする事ができず、声量にムラが生じてしまいます。

また、胸の周辺が骨を圧迫して大きく膨らむ事により、肩や首・顎にまで不必要な緊張が生じてしまいます。
普段から胸式呼吸で生活している人は、この繰り返しで発声に関連する筋肉に過剰な力みが生じてしまい、発声のコントロールに多くの悪影響があります。

「声の出し方が悪いと思っていて、実は呼吸法に原因があった」といったケースはレッスンの中でも少なくありません。
コントロールの悪さと不要な力みの定着化、この二つが胸式呼吸のデメリットであり、この呼吸法がダメだと言われる理由です。

腹式呼吸

肺の下の方、主にお腹周りを膨らませる呼吸法。
正しく行っていると、お腹の前面(腹筋部分)と腹部の背筋の外側が膨らみます。
お腹周りには背骨以外の骨がないため、深呼吸をしても肩が開いたり動いたりする事はありません。

鏡を見ながら片手をお腹、片手を背筋の外側に手を当てて深呼吸してみてください。
肩が上がっていないか、触れている両手の部分が呼吸に応じて膨らんだり縮んだりしているかで、腹式呼吸が確認できます。

腹式呼吸では肺を下部の横隔膜でコントロールします。
横隔膜は、腹筋や背筋の内側の筋肉(インナーマッスル)でコントロールを行うため、胸式に比べ安定した呼吸のコントロールが可能になります。
周辺に骨が少ないことから、体が変な力みを生じる事もありません。

腹式呼吸だと体に圧迫感もないため、思い切り良く大きな空気を使ったり、大きな声を出せるようになります。
安定した呼吸のコントロールと体への力みが生じない事が、腹式呼吸が選ばれる理由です。

呼吸方法の見分け方

  1. 全身が確認できる鏡の前に、真っすぐの姿勢で立ちます
  2. 片手をお腹、片手を背面の背筋の外側(贅肉しかない部分)に触れます
  3. 空気を吐ききり、限界まで空気を吸い吐き、深呼吸をゆっくりと数回繰り返します
  4. 鏡を見て、肩が動いていれば胸式、肩が動かずに両手に空気の動きが確認できれば腹式です

トレーニングを行っていない方は、中途半端な呼吸法に落ち着いている方も少なくありません。
腹式呼吸のトレーニングを正しく繰り返す事で、純度の高い腹式呼吸を身につける事ができます。

腹式呼吸のトレーニング

腹式呼吸では、腹筋と背筋を使って肺のコントロールを行うため、この2つの筋肉を動かし鍛える必要があります。
※インナーマッスルを使用するため、筋トレ的な腹筋・背筋のトレーニングは意味がありません

筋肉には同じ部位でも2種類の性質があります。

  • 遅筋 - スタミナ(同じ動きを持続する)
  • 速筋 - 瞬発力(素早く正確に動く)

トレーニングでは、このそれぞれに最適な練習内容を行う必要があります。

ロングブレス

遅筋のトレーニング。

  1. ゆっくりと息を限界まで吸います
  2. 同じ量の空気をできるだけ長い時間をかけて吐ききる
  3. 肺の空気がなくなったら、ゆっくりと空気を限界まで吸い、②に戻り繰り返し

空気の吸い吐きはできるだけ時間をかけて、不安定にならないように意識をしてください。
ゆっくりと空気をコントロールする事で、継続的に筋肉に負荷をかけるトレーニングです。

ドッグブレス

速筋のトレーニング。

  1. メトロノームで一定のテンポを再生します
  2. テンポに合わせ、口から空気を「ハッハッハッ」と吐きます
  3. 胸式にならないよう両手をお腹の前後面にあて、1分間継続します

息を吐くときは、お腹の空気がなくなるまで勢い良く吐きましょう。
1分間立った時、腹筋や背筋に筋肉痛のような疲労があれば、正しく腹式で行えています。

練習の注意点

どちらも行ってみると見た目以上に激しいトレーニングである事が分かります。
呼吸の形が崩れないよう、腹式であるかをチェックしながら練習を行うように心がけてください。
肩から上に疲労感がある、頭がボーっとするような症状が出た場合は、呼吸のフォームが崩れている可能性が高いです。

まとめ

無意識で呼吸をしている人の中には、腹式と胸式呼吸が混在している人も多く、本来のポテンシャルを発揮できずにいます。
呼吸法を改善するには、意識的に腹式呼吸をコントロールできるよう基礎練習を行う必要があります。

声質をより良くするためにも、呼吸量の増加と安定は発声の要となります。
ボイトレで思うように成果が出ていない方は、ご自身の呼吸練習を今一度見直してみてくださいね。

  • この記事を書いた人

高岡ボイストレーナー

レコーディングボイストレーニング教室・代表講師
■音楽同人サークル『Film Records』代表。年に2枚の作品をリリース。
他、個人/法人の制作案件をご依頼いただいております。
■『Cubase Pro 9で始めるDTM&曲作り』リットーミュージック・執筆

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